根付いた柿文化は曲げない。
70歳を超えての農業
井手上さん
広島県・三原市深町で柿を育てる井手上さん。畑に伺うと橙に色づいた実が日本の秋を感じさせます。周りの柿農家が引退していく中でも、70歳を超えて現役で作り続ける井手上さんの想いを伺いました。

還暦から始めた農業
「昔は西条柿の発祥とも言われた土地で、柿農家が何十人もいたが今はわし含めて3人じゃの」そんな現役で柿づくりに励んでいる井手上さんは、もともとは消防士で還暦を超えてから柿を作り始めたのだそう。「今年は暑さもあって例年の半分ぐらいの量しか採れなかった。本当はもっとなってるんよ」いつから農業を始めても関係ない。そんな誇りと今年の出来栄えに対する井手上さんの寂しさが垣間見えました。

受け継いできた干し柿の技術
皆さんは干し柿がなっているのを見たことはありますか?特別に現場で柿の収穫から干すところまでを体験させてもらいました。「まずはピーラーで皮を剥いて、ヘタをT字に残して紐にくくっていく」この皮剥きの作業が意外と難しい!西条柿ならではの溝にナイフを入れて丁寧に皮をそいでいきます。「一大産地の違う品種の柿は丸っこくて大型の機械でツルんと剥けるんだが、うちのは手がかかるね」これぞ日本の職人芸と感じさせられる貴重な体験でした。

いい環境は自分の手で作る
「あおし柿っていう渋柿の渋を抜いたのがあって、それが一番美味しいね。よそはドライアイスで簡易的にやるが、うちは焼酎に漬けて渋を抜く」井手上さんいわく、甘くなった柿の味が全然違うのだそう。そんな柿への想いが人一倍強い井手上さん、DIYが得意で皮剥きの作業場から、柿を干す納屋までお手製のレーンで繋げたのだとか。なんでも作ってしまうその心意気に、この柿の文化が受け継がれて欲しいなと強く感じました。

実は取材から1か月後、井手上さんから電話があり、「干し柿が湿気でカビて全てダメになってしまった」との連絡をいただきました。去年当たり前に出来ていたことができなくなる。気候変動の恐ろしさと、それでも心が折れないで来年のために樹の枝切りをする姿が本当に頼もしかったです。